『交通誘導警備』の適正化方策を語る警備座談会

防犯防災新聞 平成13年11月30日

『交通誘導警備』の適正化方策を語る警備座談会

『交通誘導警備』の適正化方策を語る警備座談会

【論点】現状と問題点▽料金適正化と警備員資質の向上▽検定制度の在り方▽「誘導監督員」養成研修の創設▽警備業法の改正について▽「ISO認定取得」が進む建設業への対応他

本誌:先程から、折に触れて「安全対策費」が問題になっていますが、この問題について、もう少しお話し下さい。特に公共工事の場合ですが、本来、建設会社側が、計上している筈の「安全対策費」が、途中で何処かへ消えてしまっている。当然、安全確保のプロたるべき警備会社に、リーズナブルな形で還元されにくい構造になっている。その不透明な部分は、政治献金にも流用されているのでは――と言う見方にも説得力があります。それで、ある警備会社の社長が、率直にその辺は一体どうなっていますかと、質問したら「とんでもない。むしろ、我々の負担の方が大きいよ」と軽くあしらわれてしまった、との話も聞いています。で、実際のところはどうなんでしょうね。(同業他社の実情をも披露しながら、次のような見方や要望が聞かれた。尚、核心を突いた意見等であり、諸般の事情を考慮して、以下に主な発言を要約した)

不透明な建設会社の安全管理費

◎――「安全対策費」には、当然ながら、建設会社の安全対策費はもとより、我々に支払うべき警備費と、国民の安全確保のコストも、本来は計上されている筈ですが、何故かその辺が不透明。つまり、警備会社は、実に嫌な言葉ですが、不当な「中間搾取」を受けているのではないでしょうか。

◎――発注官公庁も、とかく、その辺は逃げ腰です。建設業者の場合、あくまでも、「安全対策費」は、我々の内部の費用であるととらえ、警備費を極く軽く見ている傾向が強い。となると、「警備費」とは、「警備会社」とは、一体なんなのでしょうね。「安全管理費」の内訳を透明なものにしないことは誠に残念です。

B本誌B :つまり、いわゆる「ピンハネ」が横行している。安全確保を担当する立場の皆さんが、その被害に遭っている?

◎――問題は建設業者の意識ですね。我々は「安全対策費」を九千円程度しか貰ってないのに、なんで一万円以上もアンタたち警備会社に払わなくてはならないのか。その分はピンハネどころか、むしろ、我々の「持ち出し」なんだ――と言いたがります。その辺が問題なんですね。私たちの立場は実に弱い。

◎――「安全対策費」として、計上されていないとすれば、本来、そんないい加減な建設会社の姿勢を、発注側の官公庁は納得しない筈です。そんな不安全な会社に発注出来ない筈です。当然、請負金額の何パーセントかを「安全対策費」としてきちんと見積り、その中に警備員は何人といった形で計上されるべきなんですね。ともあれ、元請けから孫請けまでの間で、かなり抜かれている結果、警備料金がどんどんダウンしてしまったことは、業界関係者が等しく認めていると言って過言ではありません。

◎――我々は、建設会社ではなく、警備会社として独立した立場を、関係各方面から尊重されなければなりません。ところが、現実はそうではなく、「警備業務」のみに集中するべきなのに、現場周辺の掃除なども押しつけられがちなんです。それどころか、例えば、十名分の請求書を要求されたのに、実際は七名分だけしか支払わない。三名分が消えてしまっていると言うケースもあるんですね。何分にも、力関係が強く働く。遂々従わざるを得ない。

本誌:それこそ、まさにピンハネの好例ですね。

◎――公共工事の場合、そんな実態を、納税者である国民が知ったら怒りますよ。換言すると、警備会社が貰うべき分が、建設会社への助成金的なもの、そのサバイバルに寄与している、とも言えますね。

◎――このような極く重要な問題を、どう解決して行くべきか、具体的に詰めて行かないと、大変なことになります。

本誌:次に、公共工事に於ける警備の在り方についてお話し下さい。

下山社長(シティ警備保障):公共工事の原資は国民の税金です。警備料金も税金の一部である以上、我々にとって本来のお客様は国民です。業界の問題を考える際、この点が基本理念だと思います。我々には国民が納得・満足できるサービスを提供するプロとしての義務があり、国民はそれを求める当然の権利があります。

現状は建設会社をユーザーとしているため、国民(ドライバーと歩行者)とユーザー(作業関係者ら)両者の安全確保が求められており、誘導対象、責任の所在などが曖昧です。まず、この点をきちんと整理する改革が必要です。公共工事の警備という性格上、警備員の誘導対象は一般国民に限定したら良いと思います。そのためにも、建設会社の下請け的立場から脱却し、行政と直接契約を結ぶ分離発注契約に制度を改革することが必要です。

建設業界との関係を抜本的に改める構造改革は業界、国民にとって望ましい改革であると思います。分離契約の具体案ですが、一気に全国の道路工事現場とは行きませんので一部の国道の現場から始めたらどうでしょうか。国道工事では必ず検定取得者を配置する、その警備員の待遇は公務員に準ずるのが妥当だと思います。非常にリスクの高い仕事ですから安心して長期間働けるような賃金が必要で、有給休暇、社会保険加入など当然のこと、給与も日給制ではなく月給制が定着できるようにすべきです。業界はそれらを考慮した予算を設定して貰うよう国に積極的に働きかけるべきです。

また、入札価格を10%以上も下回るような会社は入札から除外するのです。規制緩和と言っても社会的に必要な規制はつくらなければと思います。格闘技にもルールがあるように、各社が共通のルールを守って公正な競争をしないと、足の引っ張り合いになるだけです。又、安値受注といった不毛な競争を防ぐには、入札参加資格として警備会社の公的機関による各付けが必要です。悪質業者による悪質警備員の存在は業界の信用力を低下させるばかりでなく、まさに税金の無駄使いなのです。

倭文(しとり)社長(日本セキュリティサービス):そうですね。民間平均月給と、2級検定取得者のそれが少なくとも同額でないと。それが現実は遥かに低額です。

望ましい国道工事への取得者の配置

下山社長 先程も申し上げたことですが、国道工事の警備だけは配置する警備員を全員検定取得者に義務化し、また、警備員に一定の権限を与えます。その事により責任も重くなりますが、プロとして働き甲斐のある仕事になると思われます。こうした給与と社会的地位の向上は、警備員にとって確かなインセンティブとなり、労働意欲を高め、資質の向上にもつながる筈です。国道の警備の在り方をモデルとし、現状打破、改革に向けて突破口にしたいものです。

こうした改革が実現するとそのような考え方、やり方が標準的なものとなり、都道や全国の県道に波及して行くと思います。そうした構造改革による希望の持てる再生シナリオを確立し、警備業の将来像、道筋づくりが急がれます。改革には不安が付きものですが、壊すことを恐れていては改革は実現しません。業界は創造的破壊を積極的に進めるべきです。

本誌 今のお話に関連しますが、今後、交通誘導員でないと公共工事の交通誘導警備に従事出来ない、4P中、1Pは検定取得者を配置するとなると、警備員資質の格段の向上が求められ、当然ながら検定取得者のスカウト合戦がはじまると懸念する声も聞かれます。約十万円も掛けて取得させた2級取得者が引き抜かれると穴があいてしまうのでは。そうした事態にどう対応されるのでしょうか。

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