セキュリティ・タイム9月号

2002FIFAワールドカップ・サッカー大会警備を総括する

開催地別大会警備の実施状況JAWOC・FIFA本部関係警備

ワールドカップサッカー大会警備は、十開催地における試合中の警備のみが警備業に委託されたのではない。

大会の主催者であるFIFA、JAWOC本部、内外のVIPの身辺警備、その宿泊施設等のほかに、各チームの移動に伴う空港、駅の警備、大会全体の情報を各国に発信し、連絡調整等を行う「国際メディアセンター」等の警備も業界に委託された。これらを受託したのは、大手警備会社とそのグループ十一社であった。

「国際メディアセンター」における警備は、本年二月一日から七月十四日までの五か月半に及ぶ長期間で、警備員は延べ一万名を超えた。FIFA本部要員は、大会開催前五月二十一日から終了後七月二日まで日本に滞在したが、延べ一千二百名の警備員がホテル等の警備に当たった。

チーム移動に伴う警備は、チーム来日が始まった五月十六日から七月一日まで、全国の空港、駅九か所で地元のグループ各社において延べ九百名の警備員が警戒に目を光らせた。FIFAブラッター会長は、六月五日来日、七月一日までの間、万全の身辺警備を実施した。

JAWOC本部は、東京・有楽町にあるが、その連絡要員として延べ五十名が業務に当たった。また、五月一日から六月二十九日までの二か月間二名が常駐し、延べ百二十名が警備を実施した。

JAWOC本部の常駐警備のみは、前記大手会社の支社が受注契約を行い、他はすべて本社が契約し、グループの地元各社が分担して実施した。

このほか、同社は宮城、新潟、埼玉、大阪、大分の五つのスタジアムにおいて会場警備を実施したが、これら開催地大会警備は、各幹事会社との委託契約で実施した。これを含めると同社の本大会警備に当たった人員数は延べ約一万六千名に及んだ。

警備業は本大会の影の功労者と高い評価を得たが、それは各開催地のそれぞれの警備の素晴らしさと本部関係の警備が万全であったからに他ならない。

宮城大会

6/9  メキシコvsエクアドル
6/12 スウェーデンvsアルゼンチン
6/18 日本vsトルコ

宮城大会警備では、スタジアム警備は加盟九社による共同企業体方式による受注であった。東京の企業が幹事会社となり、他の八社と委託契約を結ぶ形で実施された。スタジアム外は、旅行会社が幹事会社となって地元企業とJVを組んで実施した。宮城スタジアム六階に設置された警備センターに幹事会社と協力会社の責任者が詰め、次のような警備体制を組んで実施した。

警備体制

1.スタジアム等アクセス管理エリア内自主警備
(1)警備センター(一班)(一社十二名)
(2)直轄警備隊(一班)(一社三十九名)
(3)特別検索隊(一班)(一社二十四名)
(4)スタジアム警備隊(ゲート別等八班)(八社一千三百七十九名)
(5)スタジアム関連施設警備隊(四班)
 (メディアセンター、ADセンター、コンバウンド、アクセスコントロール)
 (四社百二十六名)

スタジアムについては、各ゲート別、スタンド別、VIPゲート、チーム出入口等に分け、各一社で担当。

2.交通誘導等アクセス管理エリア外の自主警備旅行会社が幹事会社となり、地元企業とJVを組んで実施した。

スタジアム警備実施状況
(1)開門前
○観戦者の入場ゲートは、メインスタンドエリア、バックスタンドエリア、南・北サイドエリアの四つのゲートがあり、キックオフは三回とも午後三時三十分。入場待機者が早期から集まることを予想して、所定の待機場所(メインと南サイドは南円形広場、バックと北サイドは北側駐車場内)を設定。そこに整列待機するよう注意事項を主とした案内広報に力を入れた。
○入場待機列の管理は、午前八時から開始。それ以前に、持ち主不在の敷物等の物品は撤去。列整理の際は、ジャストガード、カフーコーン、ローブ等を使用して列を作り、割り込み等をしないよう広報に努めた。
○待機列付近には、ゴミ箱、灰皿等を多く設置して、公園内の美化に努めた。
○開門前、開門時に広報した主な注意事項は次のとおり。
(1)手荷物検査を実施する(金属類用ビニール袋を配布し、その使用法等)。
(2)持ち込み禁止物品の持込みや使用禁止(ナイフ、花火、傘、酒類、缶、瓶等)。
(3)グラウンド内への飛び降り、物の投げ入れ禁止。
(4)列の最後尾の位置を明確にする。
(5)列の移動開始時間の事前告知。
(6)ゴミはゴミ箱へ、喫煙は所定の場所で。
(7)トイレ、公衆電話等の場所。
(8)開門時及び場内では絶対に走らない。
(9)スタンド最前のフェンスにまたがらない。
(10)自分の席で観戦し、椅子の上に立たない(椅子破損防止と安全の確保)。
(11)席に荷物を置いたまま移動しない(置き引き防止)。
(12)場内は禁煙喫煙スポットで)。
(13)携帯電話は、コンコースで。
(14)一人ひとりが入場券を持って入場する。
等であった。端正な制服姿、毅然とした態度で、明解に丁寧に対応し、広報する警備員を見て、観衆は注意事項をよく守り、整然とした入場をした。列整理時の警備員の態度が、その後の事故等を防止する大きな要になることを実感したという警備員がいた。いかに警備員の質が重要であるかを物語るものである。

(2)開門時
○一度に入場口に殺到しないよう、二つに分轄して入場させ、場外、ゲート付近で整列入場の徹底をはかり、混乱、事故が生じないよう広報した。
○各入場門では、手荷物検査を実施し、危険物や持ち込み禁止物品を発見した場合は、入場拒否、預かり等の処置を行うこととなっていた。しかし、預かり品は多かったが、持ち込み禁止物品は少なかった。物品を預かる場合は、「預かり証」を発行し、退場時に「預かり証」を確認した上で返却した。

(3)試合前
試合開始前には、改めて観戦に関する注意事項を繰り返し広報し、こうした注意事項が守れない場合は、退場してもらうこともあることを付け加えた。

(4)試合中
階段通路での立見禁止については関係者に対してもあらかじめ要請して徹底した。警備員としては、注意事項の遵守状況、観客の動向、試合展開等に注意し、警戒を怠らなかった。

(5)終了時
試合終了後は、興奮冷めやらぬ観客を安全、スムーズに退場させることに大変神経を使った。特に注意したのが、選手チーム駐車車、関係者駐車場付近に、サポーターが滞留しないようにすることであった。

(6)その他
警備員に対しては、次のことを徹底するよう指示した。
(1)グラウンドに物を投げ入れた者への対応
その人物を特定し、投げ入れた物を証拠品として確保、事実を警察官に引き継ぐ。
(2)発煙筒の対応
 消火活動を優先する。発煙筒を証拠品として確保。人物を特定し、事実を警察官に引き継ぐ。
(3)飛び降り対応
 事実を警察官に引き継ぐ。
(4)損害の対応
 当事者を警察官に引き継ぐ。
(5)トラブル対応
置き引き、スリ、集団暴力行為等を発見した場合は、直ちに現地警察本部、警備センターに報告し、警察官の臨場を要請、指示に従う。万全の体制、警備で徹底した警備業務を実施した結果、こうした事実も事故も発生しなかった。

実施結果

宮城スタジアムでの三試合とも、宮城地方は、大雨、強風に見舞われ、九日の最初の試合「メキシコVSエクアドル戦」では、強風で観客整理用のカゴ柵が飛んだり、SMC(サブメディアセンター)セキュリティゲートの二トンもあるテントが浮き上がったりといった状況であった。十八日の「日本VSトルコ戦」でも大雨。雨に打たれながらの列整理、傘預かり、返却所には長蛇の列ができ、その対応に追われた。また、日本戦のため、メディアンセンターには、報道関係者が約一千六百名を数え、センター間はすし詰め状態であった。メディアに関するX線荷物検査業務に急きょ、空挺保安要員を配置して万全の体制を組んだ。この試合で、日本は敗れたが、大きな感動を残して、宮城大会は終了。

 

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